人間の違い

ユークリッド・アヴェニューには 6番のバスと9番のバスが走っていて 6番のバスが来ると黒人が乗り込み 9番のバスが来ると白人が乗り込んだ 黒人でも白人でもない僕は どちらが来ても乗ることにしていた 6番の混んだバスの乗客たちは なんで乗ってくるのだと 怪訝な顔で僕を見た 9番の空いたバスの乗客たちは 静かに座っている僕に 目を向けなかった 必ずしも黒いとはいえない人たちを黒人と呼んで 必ずしも白いとはいえない人たちを白人と呼んで 黒人と白人という2つの括りのなかに すべての人間を閉じ込める 黒人の括りに入れられた人たちと 白人の括りに入れられた人たちが お互いを理解できないといって 不信感を持ち合って対立する でもちょっと深く考えてみると 同じ括りに入れられた人たちにしたって 似たような人たち同士だって わかり合えるわけではない 似ている人たちだって一人一人違う 黒人と一括りにされたって 白人と一括りにされたって 一人一人違う それなのに一括りにされ 違う括りとの違いは強調され 同じ括りとの違いは同調圧力もあって ないことにされてしまう 同じ括りのなかだって 違うのは悪くない 違うのが間違っているなんていうのが悪いのだ あたりまえのことが あたりまえと思われない社会で あたりまえのことを話すのは難しい